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へらへらぼっちゃん

2002/10/11

今日はちょっくら関西の中心であるところの梅田に行ってきたわけだが、まあ田舎もんの私から言わせてもらえば都会は怖い。これに尽きる。人の洪水、しかも非常に様々な人がおり、日本人でないのまで普通に歩いている。

海の向こうには大きな滝がある、といった化石言説をシラフで宣う老人たちが自治し、地動説がだっふんだを超える定番ジョークである村で育った私にとって、外国人が当たり前のようにあちこちを歩いているというのは非常に脅威、しかも奴らは揃いも揃って私よりずうっと背が高く、それでいて何故か私より顔が小さい。

これは全く持って理解不能な身体構造であり、一体この世に生まれ落ちた時点で試合終了のホイッスルは鳴っているのではないかなんて思うのだが、まあ改めて自らの身体を眺めてみると実に細い。筋肉はどこに忘れてきた。やい神よ、筋肉を付けるのを忘れておるぞ、なんて風に貴族のモノマネで天上に文句を吐き捨てようか。

しかしラーメンに髪の毛が入っていてもクレームの一つもつけられず心で泣きながら笑顔で平らげる私がそんな言葉を口にできるはずもなく、まあスマートなんていう横文字でなんとか誤摩化し誤摩化し生きていきましょうや、などと水槽を泳ぐヒラメみてえな顔で呟き、人込みの中を怯えながら歩く、歩く。

するとなんだか下らない衣服をファッションだなんだと称して売り付ける店のガラスに己の身体が映り、ああ細い、なんてまた思考はふりだしに戻ってくるわけであり、そんな時ふとファッション雑誌で読んだ、「太ってる男はイヤだけど痩せすぎも嫌。ボクサー体型が理想だよね」なんつう女子の意見を思い出し、ああ女子はホント言いたいこと言っちゃいますね、日本人らしくないなぁ、などと唇を震わせる。

しかしこの世には男と女、二種類しかいない、なんとかそのボクサー体型とやらをゲットして、ぜひとも私も勝者の国へ、そうすりゃ単なるマスターベーションだって、「君を想ってシャドーボクシング」なんて洒落た風に言えるし、こりゃ間違いなく抱ける、女を抱けるぞよ、いかんいかん、興奮すると貴族口調になる癖は確実に弱者の持ち物、勝者の国へ到着するまでに直しておかなきゃ、なんて思いながら私は電車の中で筋トレのイメージトレーニングを開始した次第。

頭の中で腕立て伏せ1000回を突破したが、私はまったく汗などかいておらず、疲れた気配もない、こりゃあいい、家に帰ったら腹筋のイメージトレーニングもやろう、なんて思いニヤつく私を乗せて、地下鉄は静かに暗闇を進んでゆく。

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おまえ貴族ってものを勘違いしてるよ

2002/10/20

2か月ほど前に筋トレを始めると言ったが、まあ察しの通り、私はまだ腕立て伏せの一回でさえしていない。それどころか無責任な発言をした過去の自分に憎悪の炎を燃やし、夜になるたび最寄りの公園で牛の刻参り、わら人形に釘を打ち込んでは己が痛がるという自給自足のSMプレイを繰り返す始末。そうこうしているうちに季節はゆっくりと、だが確実に流れ秋。衣服は分厚くなりひょろっちい体型をごまかせる季節となった。

では今年もこうやって、結局筋トレをしないまま終わるのか、などという疑問が沸き上がる。いやいや駄目だ、それではいつまでたっても筋肉はつかぬ。

てなわけで今日から筋トレを始めることにした。あと半年はあまり体格が分からぬ秋冬であるし、その間に私は地道に筋トレを続ける。友人達は私の分厚いコートの下で最強の肉体が育っていることも知らず、談笑したり歌ったり気楽なもの、そして動物達がこぞって冬眠から覚める春、奴らは太陽に晒された我が肉体を見て悲鳴、

「そんな筋肉、漫画でしか見たことない!」

完璧、完璧であるぞよ、げに恐ろしきは麻呂の才覚、非常に愉快愉快、きょほほほ。

すまない、悪い癖が出た。

さて、筋トレに燃える私はさっそくサイト上でその記録を綴っていこうと思ったのだが、果たして、トップページに、「腕立て伏せ○○回、腹筋○○回」などと書いてあるのはいかがなものか。そんなのが毎日毎日書かれていれば、読者にしてみれば気味が悪い、じゃあもうこのサイト見るのやめましょう、ってんで奴らは当サイトへの巡回をやめる、残ったのは男なのに男が好き、なんつう変わった趣向をお持ちの方々でした。そんなオチはいらない。

やっぱり別ページで記録していくべきでしょう、てなわけで話題のyapeusでメモ帳を借りてきた。新コンテンツ誕生、その名もマッスルメモである。メモ帳のアカウントが「mascle」であるところからも、私がいかに燃えているかが伺えるのではないだろうか。ようし身体が砕け血を吐こうとも私は筋トレを続けるぞ、しかしどうもおかしいよね、なにがって単語のスペル、mascle、どうも違和感があるよ、つうことで辞書を引いてみると、なんと筋肉を意味するのはmuscleでしたー! やっちゃったー!

やる気失せた。

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ミュージックレビュー

2002/11/22

「世界のサカモト」と呼ばれ海外でも高い評価を受ける坂本龍一が3枚同時でベストアルバムを出したのは記憶に新しい10月23日のこと。発売が決まったその瞬間に、日本音楽史に新たに三枚の名盤がその名を連ねることが決まった。そう言ってしまっても過言ではあるまい。

今回はその三枚のうち、サカモトの手掛けた映画音楽を集めた「UF」を取り上げ、そこに潜む恐ろしいまでに美しい彼の音楽性に迫ってみようと思う。ほとんど音楽経験の無い僕がこのような素晴らしい作品を批評するというのは、神に背く人間に等しい罪深き愚行であることは分かっているが、それでも僕は筆を執らざるを得ない。サカモトの音楽には、僕にそうさせるだけの抗いがたい力があるのだ。

発売日から数日後、近所のレコード・ショップで「UF」を購入した僕は、早足で家に帰り、CDプレーヤーに「UF」をセットした。僕は、新たに購入したCDは数日間ひたすら聴き続けることにしている。オート・リピート機能をオンにして、部屋にいるあいだは流しっぱなしにしておくのだ。そうすると、まるで空気中の粒子の一粒一粒にまで音楽が染み込んでゆくように感じる。その空間においては、僕は文字どおり、「体全体で」音楽を感じることができるのだ。

僕は再生ボタンを押した。美しいメロディーが、スピーカーからゆっくりと溢れ出した。

そして僕は、マスターベーションを始めた。

不自然なことではない。思春期における男性の心の中では、性欲王朝が他のあらゆる欲求を支配下に置くような、そんな性的絶対王政が君臨しているものなのだ。

僕はパーソナル・コンピュータを起動した。インターネットに接続し、迫り来るポップ・アップ・ウィンドウを次から次へと処理し、きらびやかなバナー広告に騙されることなく、たったひとつの入り口を探す。そしてデジタル化され分割されたエロスを、PCへとダウンロードする。

オーケー、いつもと同じだ。何一つ間違っちゃいない。経験が僕から迷いを消し去ってくれる。

動画はひどいものだった。女優はクワガタ虫のような顔をしていて、その上ひどくしわがれた声をしていた。それはこれまでに見てきた動画の中でも最低の部類に入るものだったし、僕はウェブ上に浮かぶ無数のエロス動画の中からわざわざこんな駄作を選んできた己の眼力に少なからず恥ずかしさを覚えた。

だが、それでもペニスは勃起していた。結局はそういうことなのだ。裸の若い女であるならば、たとえそれが木の幹から出る樹液に嬉々として吸い付きそうな顔をしていても、それでもペニスは勃起する。宇宙開拓以来、それは決して変わらない。

僕は自嘲的に笑った。やれやれ、これじゃあまるで映画のセリフだ。

「女はひどい顔をしていた。だが、それでもペニスは勃起する」

CDプレーヤーからは、「戦場のメリークリスマス」のテーマソングが流れていた。PCの画面の中では、クワガタ女が男のペニスを口に含んでいた。

坂本龍一は偉大だ。「戦場のメリークリスマス」を聴きながら見るフェラチオは、もはやフェラチオではなかった。そこにエロスの介在する余地は無かった。それは性的な次元を越えた、神々しい行為であった。

この女がフェラチオをしているおかげで、地球は回っている。

そんな突拍子も無い考えが、僕の心のドアを開けて、ゆっくりと中に入ってきた。僕はその考えを拒みはしなかった。むしろ、熱い紅茶とメイプル・クッキーで、手厚くもてなしたいくらいだった。地球が太陽との絶妙の距離を保ちながら自転し、我々が明日の生を前提として生きてゆくことができるのは、この女性のおかげなのだ。彼女がフェラチオをやめた瞬間に、世界は漆黒の闇に包まれ、思想も宗教も人種も関係なく、すべての生物は等しく死に絶えるのだ。決して大げさに言っているのではない。僕は確かにそう感じたのだ。

僕は泣いていた。

涙が頬をつたい、部屋の床を濡らした。ペニスは先程までの活力をすっかり失っていた。贔屓のチームが大敗してうなだれる野球好きの父子のように、僕は情けなくうつむき、ペニスは重力のなすがままとなっていた。何も考えることができなかった。ジグソーパズルの海に放り込まれ、何か圧倒的な力を持ったものに、そのパズルを完成させろと命令されたような気分だった。

僕は泣き続けた。

気が付けば、場面はかわっていた。男は卑猥な言葉をいくつか呟き、女優の中へと入っていった。激しい運動が繰り返されていた。クワガタ虫は、馬の如くいなないていた。しわがれた喘ぎ声は、僕に怪物の断末魔を思い起こさせた。曲は、「闘い」にかわっていた。僕は静かに笑った。やれやれ、少々うまくできすぎているぜ。

ペニスは蘇生していた。それが思春期というものなのだ。そして僕はゆっくりと、だが激しく、マスターベーションの続きに取りかかった。数分の後、僕の下半身で静かに非核三原則がうち破られていった。

評価:★★★★★(超オススメ!!)

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