田舎の駅でなかなか来ない電車を待つ
2005/04/09
田舎の駅でなかなか来ない電車を待つ。ホームに人影はまばら。時刻表はスカスカで、遠くからだと真っ白に見える。
白線の付近に、一目も憚らず抱き合うカップルがいた。男の方が、小声で女の耳元に何か囁いている。表情は、二人ともどこか暗い。おそらく遠距離恋愛なのだろう。きっと片方は入場券で改札を通り、別れまでの時間を少しでも延ばそうとしているのだ。私も遠距離恋愛をしていたことがあるから分かる。あれは別れ際の辛さが、普通のカップルの比ではない。他人の目など気にしていられないのだ。
駅のカップルは、相変わらず抱き合っていた。人の少ない田舎の駅だ。どうしても二人は注目を浴びる。だが人々の目に、人前でいちゃつく男女を見る時のような、非難の色は含まれていなかった。誰もが、その抱擁に見られる物悲しさを無意識のうちに感じ取っていたのかもしれない。
電車がやって来た。二人を引き裂くように、鋭い音を立てながら。大げさな音を出して電車が停止する。ドアが開く。男女は名残惜しそうに、互いの身体を離す。電車は無情にも、発車を告げるベルを鳴らす。二人はそれでもしばらく見つめ合っていたが、やがて諦めたように、仲良く電車に乗り込んだ。手を繋ぎ電車に乗り込んだ。
一斉にずっこける乗客。
脱線する電車。

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